ブラック ハロウィン
「お菓子、ちょうだい?」
「おやおやお嬢様、今日はそんな日でしたっけ」
お嬢様、と呼ばれる少女はコクリと頷く。
「忘れておりました故、何も用意できておりません…では今から用意を…」
そう言って買物に行こうとする黒スーツの男の服の裾を少女が握る。
「大丈夫。お菓子ならここにあるわ」
「お嬢様…」
「とっても美味しいの。お母様もお父様も私にくれたわ」
少女はニコリ、と可愛らしい微笑を見せる。
片目には眼帯、そして腕には無数の傷。それを隠すフリルの沢山ついたワンピース。
お人形のような少女だ。
男は少女に一つ礼をし、口を開く。
「そうですね…ですが私もまだ大人にはなりきれておりません。なので私もいただきたいのですが…」
「あら、貴方も?」
ええ、と頷く男に少し驚くが、先程の笑顔に戻る。
「いいわ。何でも差し上げましょう」
「では、お嬢様は何が欲しいですか?」
「瞳はとても美味しいの。でもねお母様もお父様も2年目のハロウィンには目が見えず動けなかった」
少女は淡々と語りだす。
「私はまだ瞳が2つありますよ。じゃあ今年は私の瞳を…」
「お母様もお父様も6年目には誰一人何もくれなかったわ。ねえ、貴方はずっといる?」
「そうですね…。ハロウィンさえなくなればいますよ」
「何言ってるの?ハロウィンが楽しいのよ」
「そうでしたね。お嬢様は。これはこれは失礼」
「で、貴方は何が欲しい?」
「…その真っ白な足を下さい」
「右?左?」
「…今年は右にしておきましょう」
「嫌な選択ね。今年から動けなくなるじゃない」
「そう、お嬢様をこの城に縛り付けるために選びましたから」
「まあ、意地悪ね」
「お嬢様ほど狂ってはいませんよ」
「そうかしら?」
「ええ」
一通り会話を終えれば少女は男の目に手近づける。
真っ白な指先に赤いネイル。
男がニコリと笑って斧を持てば、少女もまたニコリと笑う。
お母様とお父様、2年目には両目を失った。
お母様とお父様、4年目には一人は両足を、一人は両手を失った。
お母様とお父様、6年目には何を失った?そう命を失った。
お母様とお父様、1年目には私を殺そうとした。
お母様とお父様、3年目には私に許しを請うようになった。
お母様とお父様、5年目には私に殺せと言ってきた。
お母様とお父様、7年目には何も残らなかった。