「ねえ、染めてあげる」
低い声をいつもより低くして貴方は言う。
「嫌です。困ります。やめてください」
相変わらず淡々とした自分の声。
可愛らしい声に何度憧れただろう。
何故かって?
そりゃ可愛いほうが誰もが振り向くでしょう?
顔が微妙でも目閉じりゃ聞こえるのはその声。
男はそれで十分でしょう?顔も声も良けりゃ女は激しく嫉妬狂うだろうし。
だけど貴方の瞳に映る私は残念なことに声も顔も駄目ね。
正直もう女は辞めました。無理ですこの容姿。無理ですこの低い声。
それなのに物好きね。
貴方は突然やってきた。
私は貴方が嫌いだった。町を歩けば女がキャーキャー言うんですもの。
煩いったらありゃしない。
貴方を無視したのがそんなに憎いのか、この自惚れ野郎。
だから今現在、私は首を絞められているのか。
微妙な手加減がより一層苦しくさせる。
「どうして無視なんかしたの?」
貴方は嘲笑するように言う。
「どうして答えてくれないの?」
貴方は悲しそうに言う。
答えて欲しいならこの手を離しやがれ馬鹿野郎。
不意に手を離され私はその場に座り咳き込む。
ゆっくりと顔を上げると目が合った。
ああなんて綺麗な瞳の色。濁りのない色。
「お答えして欲しければその瞳を下さいな」
私は手を差し出す。
「じゃあ君も差し出して。僕以外を映す瞳なんか必要ないから」
そんなにも残酷な笑みをどこで覚えたのか聞きたい。
ガラにもなくぞっとしてしまった。
その光景が可笑しいのか、貴方はこう囁いた。
「僕色に染めてあげる」
殺されるように壊される