酷く悔しいものです。
こんな薄汚い感情は愛しい人に見せずと思っておりました。
それなのに愛しい人のすぐ傍で言葉を吐いてしまいました。
お赦し下さい。お赦し下さい。
罰することはないでしょう?罰するつもりならば生まれた時に
この息の根を止めておいて下さればよかったのに。
だってね、聞いて下さい。
聞かずして捕まえないで下さい。
手を出した方が悪いのか最後に現場に残っていたものが悪いのか
そんな決め方ならもうこの世の正義など語らないで下さい。
この着物が赤く握られた刃物が証拠ですって?
まあお聞きくださいな。
こちらにとて言い分はあります故。
それにやってないことまで罪を被せられては困ります。
知らないことを言えと言われても答えようがありませぬ。
尋問などされなくともこちらからこの口ある限り話します。
さ、お聞きになる気にやっとなりました?
煩いなんて言わないでください。本当に煩いのはどちらだと思っておられるのです?


私は確かにこの男を好いておりました。
この男とて私を嫌いではなかったでしょう。
自惚れ?いいえ、嫌いな相手をわざわざ傍には置きませんでしょう?
口を挟まず黙ってお聞き下さいな。
して、この場所を歩いておりました。今日はお祭りがありますので。
すると後ろから、私の後ろで倒れている男が私の前で倒れている人を切りつけたのです。
こんな奴が愛しい人を殺めたと思うと今でも腹が立ちます。
私はとっさに愛しい人の持つ刀を抜きソイツを刺したのでございます。
何度も何度も。罵りながら。憎らしく汚い声がいつ聞こえなくなったかすら分かりませぬ。
貴方達が来るまで刺し続けていましたから。
時間?そんなの分かるわけありませぬ。まあ数秒ではないですが。
この男に見覚えはないのか? あるもなにも
ソイツは私の前の旦那にございます。
勿論、今は他人なので本当に見覚えがあるだけでございますが。
何のために切りつけてきたかなど分かりませぬ。
それだけは本人にしか分からないでしょう?
私?私は何もしておりませぬ。
ただ嫌なことがあるんです。お聞き下さい。
二人とも死んだら二人がまた地獄で巡り逢いましょう?それが嫌で仕方ありません。





殺したことに後悔など何故しなければならないのですか?
私は私の行いに恥はないと堂々と言えます。