紅 葉
私の隣でお酒を飲む貴方。
もう何本も空の入れ物が転がっております。
いいところに連れて行ってやる、と来たのは村の奥にある空き家。
私達は開けっ放しの入り口を見ております。
ここ飲むためのお酒に寝るための布も用意してありまして。
「ま、用意の凄いこと」
「煩い。黙って見とけ」
そういって貴方の方に向けた顔を正面向くように戻す。
少しだけみた貴方の顔はお酒を大量摂取してる割には普通で。
「お酒ばかりで女の喜ぶものは用意して下さらなくて?」
私は少し不機嫌に問いかけた。前を向いたまま。
貴方はお酒にちょっとした肴があれば宜しくても
私はお腹が空きます、と付け足した。
すると、ふう、とため息交じりの声が聞こえたかと思うと
私の冷えていた体は熱を感じた。
「やれやれ、煩い奴」
抱きしめている腕に愛しさを感じる。
「…お酒臭い」
「煩い」
「煩い煩いと馬鹿の一つ覚えのように言わないで下さいまし」
「……」
黙った貴方はきっと不機嫌な顔をしているのでしょう。
先刻の私のように。
「大人しく肴を愛せないのか?」
「あらあら、お酒を飲まない私に肴だけとは不躾ではございませんくて?」
クスッ、と笑うと貴方の舌打ちが聞こえた。
それがまたたまらなく可愛くて貴方の腕にすがりついた。
ねぇ紅葉なんかより貴方の声を聞くだけで酔ってしまう。